活動報告

2022.07.4

こどもの医療被ばくを考えるサイト『PIJON(ピジョン)』のご紹介

電離放射線の医学利用に関しては、放射線診療技術の進歩に伴い、子どもへの放射線診断・治療の適用も広がる傾向にあります。例えばコンピュータ断層撮影(CT)は、診断に役立つ情報を迅速かつ正確に提供することが可能であり、我が国において患者のケアを大幅に改善してきました。小児CTに関しても救命に役立つのみならず、多くの場合、より侵襲的な手技を要せずに生体内の情報に得ることが可能です。

一方、子どもは成人に比べ体が小さく、臓器を遮蔽する役割をする周囲の組織が少ないので、同じ条件下では成人より吸収線量が大きくなる傾向があります。子どもへの放射線診断・治療の適用に関しては、特に確率的影響のリスクを考慮すべきとされています。これは特定の種類のがんに関しては子どもが成人よりも感受性が高いこと、また子どもの場合、放射線の晩発的影響が発現しうるほどの長い余命を有していることに起因します。

患者と家族は可能な限り情報を理解し、それに基づいた選択を行えるように、小児画像診断に関するベネフィットとリスクについての話し合いに積極的に参加することが望ましいです。画像診断のベネフィットとリスクについて適切に知らされていない場合、有益でないだけでなく、有害な選択さえする恐れがあります(例えば、必要なCTを拒否する、または正当とは認められないCTを要求するなど)。放射線リスクコミュニケーションおよびベネフィットとリスクに関する情報共有は、小児の画像診断を指示する医師と、実施する医療従事者(診療放射線技師)の間においても必要です。

こどもの医療被ばくを考えるサイト『PIJON(ピジョン)』

こどもの医療被ばくを考えるサイト PIJON

子どもたちが病気やけがで病院を訪れたときに、その程度や範囲を調べるために大人と同様にレントゲン撮影などの画像診断が行われます。画像診断には単純Ⅹ線撮影(レントゲン撮影)、超音波検査、CT検査、MRI検査、核医学検査、透視検査、血管撮影検査など各種あります。 …

我が国の小児医療の最前線を担う国立成育医療研究センターでは、先に述べた「患者と家族」「小児の画像診断を指示する医師」「実施する医療従事者(診療放射線技師)」の3者間での小児画像診断に関するベネフィットとリスクについて情報共有を豊かにするための活動として「PIJON」というプロジェクトが行われています。

PIJON(ピジョン)とは、『こどもの画像検査(Pediatric Imaging)の正当化(Justification)、最適化(Optimization)を考え、情報を提供するウェブサイト(Network)』というサイトの目的を表す英単語の頭文字をとって名付けました。パパ、ママ、そして小児医療に携わる医療従事者のための、こどもの医療被ばくを紹介する総合サイトです。

こどもの医療被ばくを考えるサイト PIJON より引用

一般の方へ向けた情報発信

パパ・ママ・一般の方へというページには、

  1. 「画像検査撮影方法」と題された検査説明資料
  2. 医療被ばくと発がんリスクについての解説
  3. 子ども向けMRI検査の説明動画

のコンテンツが掲載されています。
(2022年7月現在)

なかでも1.『画像検査撮影方法』は優しいタッチで描かれた「放射線撮影って、なんだろう?どんなことをするの?」の表紙に続き、各種画像検査(レントゲンやCTなど)の撮影の流れや目的を説明するpdf資料になっています。まさにMedical PLAYが目指すところである「プレパレーション」のためのツールであり、検査前にご家庭でご両親がお子様に読み聞かせることで、よりスムーズに検査が実施されることと思われます。

小児画像検査を行う従事者へ向けた情報発信

小児画像検査についてのページでは、主に画像検査を指示する医師や実施する診療放射線技師に向けた情報提供がなされています。

国立成育医療研究センターで実際に使用されている一般撮影のマニュアルやルーチンプロトコルの紹介、我が国と諸外国の診断参考レベルの比較紹介など、小児検査を行ううえで知っておきたい情報が集結しています。小児の画像検査件数がそれほど多くない施設では造影CT検査の注入条件やScan delayの設定等で迷う状況も多くあると思います。そんなときに、こちらのページが放射線検査の最適化の助けになると思われます。

また米国の放射線診療に深く関わる団体が協力して立ち上げられたImage Gently(イメージジェントリー)というキャンペーンがあります。これは2007年に立ち上がった小児の医療被ばく低減を推進する世界規模のキャンペーンであり、そのホームページは小児医療被ばくの総合情報ネットワークを形作っています。

PIJONが目指すところはまさに「日本版Image Gently」であり、PIJONのサイトではImage Gentlyコンテンツの和訳や活動の紹介等がされています。


PIJON × Medical PLAY の取り組み

情報提供「Medical PLAYの活動紹介」
MedicalPLAY 代表 大脇由樹
特別講演「明日からできる小児医療被ばくの低減」
国立成育医療研究センター 放射線診療部 診療部長 宮嵜治 先生
オンライン開催でのディスカッションの様子

去る2022年3月10日(木)に、Medical PLAYの事業「医療の質・安全の向上に向けた情報提供、啓発事業」の一環である第1回 Medical PLAYセミナーをオンラインにて開催いたしました。

情報提供として当法人代表 大脇より「Medical PLAYの活動紹介」、共催頂きましたキヤノンメディカルシステムズ株式会社 甲斐様より「キヤノン⼩児放射線領域への取り組み」、教育講演として当法人理事 田頭より「患者さんに胸を張れる線量管理を⽬指す」と題して講演が行われました。

特別講演としまして、我が国の小児放射線画像診断のトップランナーであり、PIJONプロジェクトの立役者でいらっしゃいます国立成育医療研究センター 放射線診療部 診療部長 宮嵜治 先生をお招きして「明⽇からできる⼩児医療被ばくの低減」のご講演を賜りました。

法人として初のセミナーではありましたが、155名の参加申し込みがあり、当日は診療放射線技師を中心に小児医療に関わる医療従事者(看護師、CLS)や学生に参加頂きました。

誠にありがたいことに、本セミナーをきっかけにPIJONのサイトのリンク集にMedical PLAYのHPを掲載していただくことになりました。法人としましても、今後も有意義な情報発信に努めて参ります。